健康経営の取り組みにおいて経済産業省では、さまざまな顕彰制動を設けています。健康経営を行う全ての企業を対象にした認定制度「健康経営優良法人」もその一つ。
本記事では健康経営優良法人に認定されることで得られるメリットをご紹介します。
データで読み解く健康経営導入のメリット
健康経営を推進し、健康経営優良法人に認定されることで得られるメリットは多岐に渡ります。さまざまな施策により従業員の健康が増進され、一人ひとりの生産性が向上することはもちろん、休職者・離職者の抑止にもなり、その結果、企業の業績や価値の向上に結びつきます。これらのメリットは、さまざまなデータによって裏打ちされています。
・健康経営と利益率
健康経営の実践が、企業の業績や価値の向上につながることは、健康経営を行う企業を調査したデータ上からも証明されています。
以下の図は、健康経営を導入した企業のROA(総資産経常利益率)とROS(売上高営業利益率)を検証したもの。
(出典:日経Smart Workプロジェクト「スマートワーク経営研究会」中間報告「働き方改革と生産性、両立の条件」[2018年6月] )
3つの線はそれぞれ健康経営の施策について、
・①水色線:実施していない企業群の2011年〜2016年の利益率の推移
・②橙色線:2008年〜2010年に実施した企業群の2011年〜2013年の利益率
・③黒色線:2011年〜2013年に実施した企業群の2013年〜2016年の利益率
を表し、ROA(図左)、ROS(図右)に分けて比較しています。
②、③共に、健康経営を実施後、タイムラグを伴いつつも利益率が上昇していることが見て取れます。なお、健康経営による効果が顕在化するまでのタイムラグは、およそ2年という報告もあります。
・健康経営と株価
続いて以下の図は、平成30年度健康経営度調査の結果から健康経営と企業業績の関係を調査したものです。
(出典:経済産業省「健康経営の推進について」)
図左の線はそれぞれ、
・①水色線:健康経営度調査に回答した企業全体の総合得点加重ポートフォリオ
・②赤色線:健康経営度調査上位20%企業の総合得点加重ポートフォリオ
・③青色線:TOPIX指数
を表しており、①・②を2014年3月末から保有した場合、③のTOPIX指数と比較して5年間でおよそ30%の超過リターンに。健康経営の導入は、長期的に見ても株価に対して有益であることを示唆しています。
また図中央および図右を読み解くと、超過リターンのうち、業種特有の事情による変動「業種要因」と、景気による変動「スタイル要因」を除いた「銘柄固有リターン」も上向き傾向で、健康経営を推進する企業は、レジリアンス(耐久性)が高いという調査結果も得られています。
・ステークホルダーからの評価
以下は、健康経営優良法人2017および2018に連続認定された法人に対して、平成30年度に実施されたアンケートの結果で、認定後の変化や効果について聞き取り調査を行なっています。
大規模・中小規模法人部門ともに、「従業員の健康に対する意識向上」や「顧客や取引先に対する企業イメージの向上」への高い効果を認めており、社内・外の多様なステークホルダーからの評価を実感していることがわかります。
(出典:経済産業省「健康経営の推進について」)
自治体や金融機関等が提供するインセンティブ
データ面から健康経営のメリットを見てきましたが、この章では自治体や金融機関などによるインセンティブについてご紹介します。
・自治体によるインセンティブ
健康経営優良法人制度は国による顕彰制度ですが、健康経営や健康づくりに取り組む企業を認定・表彰する制度は全国各地の自治体等にも広がっており、その数は100以上に上ります。
また自治体によっては、公共事業・入札審査で加点評価が得られる、融資優遇や保証料の減額、奨励金や補助金といったインセンティブを提供する自治体もあります。
【インセンティブの一例】
・長野県松本市:建設工事における総合評価落札方式の加点評価
→「健康経営優良法人」認定事業者に対しては100点満点中1.0点の加点評価
・大分県:中小企業向け制度資金「地域産業振興資金」
→「健康経営優良法人」等の認定を受けている中小企業・小規模事業者に対して特別利率・保証料率
により融資。
・金融機関等によるインセンティブ
さらに、金融機関等でも融資優遇、保証料の減額や免除などのインセンティブを提供しています。
【インセンティブの一例】
・池田泉州銀行:人財活躍応援融資“輝きひろがる”
→「健康経営優良法人」等の認定を受けている中小企業に対して、銀行所定金利より
一律年▲0.10%の融資を実施。
・東京海上日動火災保険株式会社:業務災害総合保険「超Tプロテクション」
→従業員が被った業務上の災害をカバーする保険商品において、「健康経営優良法人認定割引」
として5%の割引を適用。
・住友生命保険相互会社:団体3大疾病保障保険「ホスピタA(エース)」
→3大疾病を保障する団体保険において、「健康経営優良法人」に対して健康経営割引プランを
適用し、保険料を2%割引。
・ハローワーク求人票におけるPR効果
ハローワークインターネットサービスにて求人票を登録する際に、「健康経営優良法人」大規模法人部門・中小規模法人部門のロゴマークが令和4年6月から利用可能。求職者に対して端的に健康経営導入企業であることを示すことができるようになりました。
おわりに…
健康経営優良法人の取得について強いてデメリットを挙げるなら、毎年申請手続きが必要であることでしょう。しかし、これまで見てきた通りそれを上回る多数のメリットがあります。
2024年度の申請が間もなく始まります。この機会に、健康経営優良法人の取得を目指してみてはいかがでしょうか。