どこが変わった?令和6年第4期特定健診・特定保健指導の変更点

どこが変わった?令和6年第4期特定健診・特定保健指導の変更点

  • コラム
  • 健康経営

厚生労働省は令和6年度から始まる第4期特定健診・特定保健指導において見直しを行いました。今回は、第4期特定健診・保険指導の主な変更点についてご紹介します。

特定健診・特定保健指導とは?

特定健康診査(特定健診)・特定保険指導とは、メタボリックシンドロームに着目した健診・保険指導のこと。40歳〜74歳の医療保険加入者が対象になります。
では、なぜこの健診ではメタボリックシンドロームに着目しているのでしょうか?
日本人の死因別割合を見ると、がん(悪性新生物)、心疾患(狭心症、心筋梗塞など)、脳血管疾患(脳梗塞、くも膜下出血など)が上位を占めています。これらは、いわゆる生活習慣病と呼ばれ、偏った食生活や睡眠・運動不足、喫煙や過度なストレスで発症するといわれています。なかでも心疾患や脳血管疾患は動脈硬化が要因となることが多い病気で、動脈硬化の危険因子としては高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満・喫煙が挙げられます。
メタボリックシンドローム、いわゆるメタボは、内臓に脂肪がたまり腹囲が大きくなる内臓脂肪型肥満に加え、高血圧・糖尿病・脂質異常症のうち2つ以上が当てはまる状態のことをいい、動脈硬化を進行させ生死に関わる深刻な病気を招く可能性を高めます。

メタボリックシンドロームの診断基準

これらのことから、メタボリックシンドロームを早期に見つけ、改善することが生活習慣病を予防するためにも大切になってくるのです。
特定健診の基本的な健診では、以下の項目の測定・検査を行います。

基本的な検診の項目

特定健診の結果、生活習慣病のリスクが高いと判定されると、医師・保健師・管理栄養士など専門家らの特定保健指導により、食生活や運動など生活習慣の見直しを行います。

第4期特定健診の主な変更ポイント

令和6年度から始まる第4期特定健診・特定保険指導では、どのような改訂が行われたのでしょう。まずは特定健診の主な変更ポイントをご紹介します。

・喫煙・飲酒・保険指導の質問項目・解答選択の見直し
喫煙や過度な飲酒は生活習慣病のリスクを高めることから、問診においてより詳細な内容に変更されました。
これまで喫煙は「たばこを習慣的に吸っているか」を問うだけでしたが、新たな質問では「習慣的喫煙」について条件をつけ、以下のように変更されています。

質問:現在、たばこを習慣的に吸っていますか。
※「現在、習慣的に喫煙している者」とは、条件1と条件2を両方満たすものである。
条件1:最近1カ月間吸っている
条件2:生涯で6カ月間以上吸っている、又は100本以上吸っている
回答
①はい(条件1と条件2を両方満たす)
②以前は吸っていたが、最近1カ月間は吸っていない(条件2のみ満たす)
③いいえ(①②以外)

この変更によりこれまでは調査時点での喫煙の有無を問うものでしたが、過去に遡ってどの程度喫煙歴があるかが分かるようになりました。

飲酒についても喫煙と同様に、より詳細に現状を問う内容になっています。これまでは飲酒の頻度について、「毎日/時々/ほとんど飲まない(飲めない)」のいずれかで回答させていましたが、以下のように変更されました。

質問:お酒(日本酒、焼酎、ビール、洋酒など)を飲む頻度はどのくらいですか?
※「やめた」とは、過去に月1回以上の習慣的な飲酒歴があった者のうち、
最近1年以上酒類を摂取していない者
回答
①毎日
②週5〜6日
③週3〜4日
④週1〜2日
⑤月に1〜3日
⑥月に1日未満
⑦やめた
⑧飲まない(飲めない)

このように、普段の飲酒回数をより細かく回答させるようになったほか、続く「1日あたりの飲酒量」を問う質問も回答を「①0〜1合未満/②1〜2合未満/③2〜3合未満/④3合以上」の4択から
「①1合未満/②1〜2合未満/③2〜3合未満/④3〜5合未満/⑤5合以上」の5択に変更されました。
また、「生活習慣の改善について保険指導を受ける機会があれば、利用しますか」という問いを、「生活習慣の改善について、これまで特定保険指導を受けたことがありますか」と、過去の受診歴を問う内容になっています。

・健診項目の見直し
中性脂肪の検査において食事は大きく影響します。今回の変更で、空腹時に加え、随時採血時の基準値も追加されました。

中性脂肪:空腹時150mg/dl / 随時175mg/dl

第4期特定保健指導の主な変更ポイント

特定保健指導の変更点は以下の通りです。

・アウトカム評価を導入し、特定保健指導の見える化
これまでの保険指導は、対面や電話、電子メールなどで支援を受けた時間によりポイントが付与される「プロセス評価」のみでしたが、今回の変更により「アウトカム(結果)評価」が加わりました。
このアウトカム評価では初回面接から3カ月以上経過後の実績評価時に、腹囲・体重と行動変容について結果を確認します。

■主要達成目標:腹囲2cm・体重2kg減

上記はアウトカム評価の目標数値。これはモデル実施を行った際、腹囲2cm・体重2kg減を達成した者は翌年の健診結果も改善傾向にあったことから主要達成目標に定められました。達成した場合180pが付与されます。
2cm・2kg未満の場合でも、1cm・1kg達成なら20pのほか、食・運動習慣、喫煙などの行動変容でもそれぞれ評価し、ポイントを付与します。また、前回にひきつづき「プロセス評価」も行われ、指導を受けた時間に比例してポイント評価します。
アウトカム評価を取り入れ“見える化”を図ることで、達成状況を具体的に把握し、実状に即した質の高い保健指導を行うことができます。また、見える化の推進により積み上げられた情報が年齢や地域、事業者ごとなど独自の課題の検証にも活用されることが期待されます。

・ICT活用の推進
近年進んだ働き方の多様化に合わせて、保険指導においてもICT活用を推進し、遠隔で行う保険指導においても評価水準や時間設定などを体面の指導と同等します。

おわりに…

健康経営の推進において従業員の健康状態の把握・改善は重要で、そのためにも特定健診・特定保険指導は大切な施作の一つといえます。今回の問診項目の見直しやアウトカム評価の採用などで、より一層従業員の健康状態の見える化が進み、ICT活用の推進で指導も効率的に行うことができるようになります。第4期の変更点を把握し、従業員の健康管理に役立てましょう。

【出典】
政府広報オンライン「生活習慣病の予防と早期発見のために がん検診&特定健診・特定保険指導の受診を!
厚生労働省「第4期特定健診・特定保険指導の見直しについて