導入事例
伊藤忠エネクス株式会社 様
平均歩数で寄付を行い、社会貢献も
- 【業種】
- 商社(化学・石油・ガス・電気)
- 【ご担当者】
-
健康管理室 保健師:加藤恵美氏(写真左)
健康管理室 保健師:日野間佳子氏(写真右)
RenoBodyウォーキングイベントサービスをご導入いただいている企業ご担当者にお話を伺うインタビューシリーズの第10回目です。
今回は、伊藤忠エネクス株式会社様にこれまでの健康経営の施策や、ウォーキングイベントを実施された際の取り組みについて伺いました。
[取材日:2023年7月14日/インタビュアー:村上友輝]
目次
健康経営の方針やこれまでの取り組み
―健康経営について、御社の指針や大事にされているテーマなどを教えてください。
加藤氏:社員の健康保持増進と安心して働くことができる環境を整え、社員一人ひとりがやる気とやりがいをもって活き活きと働くことができるよう健康経営を推進しています。
会社の成長を支える社員のモチベーションや生産性の向上、組織の活性化によりパフォーマンスの最大化を目指しています。
―健康経営優良法人認定取得をご検討された経緯を教えてください。
加藤氏:弊社では2016年11月より、短時間に仕事のパフォーマンスを発揮し、仕事のやり方を変えるとともに健康増進を進め、より良い環境を創っていくことを目的として、「働き方改革『ENEX EARLY BIRD』」を展開しています。
ちょうどそのタイミングで健康経営優良法人認定の情報を得て、調査に参加することで客観的な評価をしていただくことが、今後の健康経営推進において大きなモチベーションになると考えました。
―ウォーキングイベント以外で実施されている健康経営に関する取り組みを教えてください。
加藤氏:有休休暇取得率80%以上、月平均の残業時間を減らすなどの取り組みで、働きやすい職場を作るとともに、規則正しい生活をしやすい環境を目指しています。
また健診での有所見者に対する、受診や2次検査勧奨を社内の保健師が行い、疾病予防や悪化防止のためのフォローをしています。
その他にも、がん検診の充実や、治療と仕事の両立支援、ストレスチェックの全国展開、毎年の健康イベントの実施、社内SNSを活用した健康情報の提供など、広く健康増進・支援策を行っています。
―社内SNSを活用した健康情報の提供とは、どのようなものですか?
日野間氏:グループ会社も含めて社内に情報発信したい人が自由に投稿できるSNSツールです。新たな事業の発信をしたり、社内サークルの活動記録・部員勧誘の投稿をしたりと広く活用されています。
私たちはその中に「健康管理室だより」というページを作り、情報を発信しています。2,000人以上が登録しています。
加藤氏:皆さん、記事に対して「いいね」してくれたり、コメントをしてくれたりしています。
―そのぐらいライトな感じの方が、皆さん見てくれますよね。
日野間氏:意外と見ている人が多いですね。
「年末のお酒の飲み方」のような情報を取りあげてみたり、健保からのサービスもご紹介したりしています。なかなか皆さん、健保のページまで見にいかないので…。
―これまで実施された健康イベントについても教えていただけますか?
日野間氏:健康イベントは毎年何かしら実施しています。
コロナ禍の時には、オンラインで座ってできる運動に取り組んだりしました。また、それ以前ですと、睡眠の質を改善する講習会も行いまして、専門家の方を招いて、枕の選び方などを講義していただきました。
加藤氏:「笑いヨガ」もやりましたね(笑)。
「ENEX EARLY BIRD」を立ち上げた直後ぐらいに、「タバコの害」のような講座も行いましたが、内容が重く、皆さんが積極的に「参加したい!」という感じではありませんでした。そういう題目は指導として大切ですが、健康イベントとしては、皆さんが楽しく健康に関して考えたり、振り返ったりでき、その先へ進むことができる内容の方が良いのかもしれないと考えています。
ウォーキングイベントを実施して
―昨年秋と、今年の5月にウォーキングイベントを行われていますが、実施後、全体として従業員の方々の健康意識が変わったなどの実感はありますか?
加藤氏:イベント後の参加者アンケートで、今後の歩行習慣の見込みを聞いたところ、97%以上の方が「できるだけ歩くことを意識し続けたい」「大会期間中と同じくらいをキープしたい」と答えてくれました。廊下ですれ違ったときに、「まだ歩いていますよ!」と声をかけてくれる方もいました。
海外赴任中の方も、現地からウォーキングに参加
―参加された方々の部署や年代、性別的な傾向はありましたか?
加藤氏:すべての年代で、ほぼ同じような参加率です。部署による偏りは若干ありますが、本社だけではなく支店にいる社員や出向者も広く参加していますし、今回は役員も複数参加しました。
またRenoBodyのイベントは海外からも参加できるため、海外赴任者も参加してくれました。出向している社員が「会社と繋がっている感じがして嬉しい」とメールをくれることもありました。
―年代などの偏りもなく、海外勤務の方も参加いただいたようですね。
海外でもアプリとして普通にダウンロードできますが、ウォーキングイベントの集計が日本時間になってしまうという制限はあります。それも、イベント初日と最終日の時間がずれるだけなので、それほど影響はないかと思いますが、海外からのご利用は、特段問題はなかったでしょうか?
加藤氏:ちゃんと歩数も入ってきましたし、問題なかったですね。
イベント後にウォーキングが習慣化し、減量に成功した方も
―特に頑張った方、生活スタイルが変わった方のエピソードなどありますでしょうか。
加藤氏:社内報の「Happy News」というコーナーに、「昨秋のイベント以降、毎日歩き続けて6kg減量しました!」という方が、健康管理室へのメッセージという形で投稿していました。「健診結果も良くなっているはずです!」とのことなので、保健師一同楽しみにしているところです(笑)。
―6kg減量は、すごいですね!
加藤氏:イベントの時だけでも歩いてもらえれば嬉しいですが、目指すところは「習慣化」なので、歩くことでの身体の変化を感じて続けてくださると、本当に嬉しいですね。
ウォーキング習慣化を目指し、歩き過ぎを防ぐ歩数上限を設定
―歩数の上限を2万歩や、1万5,000歩にされた理由を教えていただけますか?
加藤氏:以前、デモで実施した時に、「周りや順位を気にし過ぎて、歩き過ぎてしまう」という意見がありました。また、とにかく勝ちたい一心で歩き過ぎてしまう方たちがいると、「もう上位は固定だから、私たちはどうせそんなに歩けないから」と、周りは引いてしまう…。そこに壁ができるとワクワク感も減ってしまいます。ガッツリやっている人と、ほどほどにやりたい人との熱の差をなくしたいと考えていました。
私たちも何万歩も歩いて欲しいというわけではなく、生活習慣の改善としてイベント後も継続して歩いていただくには、やはり8,000歩ぐらいがベストと考えています。ただ、ランキングによる賞品進呈もあるので、ある程度は幅を設けた方が良いと考えて秋のイベントの際は上限を2万歩に設定しました。
でも、最初に2万歩を数日続けてしまった方が、2万歩の呪縛から逃れられなくなってしまって…。
日野間氏:今日の歩数に足りていないと言って、夜中に歩いたとか…そういう努力も後日談としてお聞きしました。
加藤氏:それで上限をもう少し削ろうということになり、5月のイベントの際は1万5,000歩にしました。順位による賞品の設定もなくしたので、上限を下げても問題ないと考えました。
ただ、例えば土日は結構歩いていて、平日はそれなりという方の場合、土日が1万5,000歩で切られてしまうとかなりの歩数を損してしまいます。週末だけ歩数の上限を変える、「何曜日は歩くデー」として上限をなくすなど、メリハリがあっても面白いかなと思います。実際にそういう意見もアンケートで参加者から寄せられましたね。
前回大会でのインセンティブ設定の課題と、解決策
―ウォーキングイベントの運営側として苦労された点、印象深かった出来事などありますか?
加藤氏:昨秋にウォーキング大会を行った際は、上位3名に特別な賞品を、その他平均8,000歩以上達成した方の中から抽選で50名に別の賞品を用意しました。さらに、参加者全員の平均歩数によりNPO法人への寄付を行うこととし、寄付額を平均8,000〜1万歩未満なら10万円、1万歩以上なら15万円と設定しました。
すると、ある3名が毎日上限歩数を歩き続け、毎日みんながその達成をドキドキしながら見守りつつも、誰も逆転しようがなくなる…という結果になってしまいました。
また8,000歩達成賞も「抽選で50名」と謳ったものの、実は50名行かないかな…と思っていたのですが、実際には79名と予想を大幅に超える人数が8,000歩を達成しました。厳正な抽選を経て賞品を進呈したのですが、上位にランクインしているのに賞品がもらえないという事態が起きました。
どちらも皆さんのやる気が見られて嬉しいことだったのですが、その反面、次のイベントをどのようにしたら最後まで楽しく参加してもらえるか、頭を悩ませることになりました。
イベント開催中は、1週間ごとに社内イントラに中間発表記事を出しているのですが、一覧に表示しているニックネームやたくさん歩いている方のことなどが、イベントに参加していない人も含めて話題になることがあったようです。完全個人戦ですが、コミュニケーションの活性化にもつながっていました。
―今回の5月のイベントの際は、課題をどのように変えられたのでしょうか?
加藤氏:賞品に関しては、平均8,000歩以上達成者全員に進呈するというルールにしました。
NPO法人への寄付は、前回は最高額を寄付できたのですが、それが逆に参加者へのプレッシャーとなり、「歩数の平均値を下げてしまうので参加しない」という選択をする方が増えるのではないかという懸念がありました。
今回は普段全く歩かない人が「少し頑張ろう」という気持ちで参加することも促したいと考え、参加者それぞれの平均歩数をすべて足し、1歩=0.05円換算で寄付をすることにしました。例えば、自分の平均歩数が3,000歩だったとしても150円分の寄付に貢献できる、ということになります。これにより、「参加すること」そして「1歩でも多く歩くこと」が社会貢献になるということで、モチベーションに繋がると考えました。
また、昨秋に実施した際は上位者に別の賞品を用意したところ競争が過熱し、「無理をしてしまった」という意見もあったため、今回はあえてランキングによる賞品進呈は設定しませんでした。それでも毎日1万5,000歩以上歩き続けた社員が6人もいて驚きました。
イベント中は、参加表明したのにアプリでのエントリーがない人や、しばらく歩数連携がない参加者に直接メール連絡するなどのフォローを行っていました。
イベント終了時に、参加者一人ひとりに、フィードバックとしてその人の「平均歩数」とそれによる「寄付金額」を記載したメールを送りました。
各参加者の平均歩数に換算して寄付を行う社会貢献活動も
―寄付する団体を選ばれた経緯など教えていただけますか?
加藤氏:社内で社会貢献を中心に行っている部署に相談して、候補をいくつか出してもらいました。弊社では未来ある子どもたちへの社会貢献を行っていることもあり、小児がんの子どもたちを支援する団体を選ばせていただきました。
日野間氏:寄付はやはり会社の理念に合うところが良いと思いますので、実際に活動レポートを見たり団体の方にお会いしたりして決めるのが良いと思います。
―ウォーキングイベントを行う上で、今後の課題などはありますか?
日野間氏:イベント参加に対しての抵抗感はそれほどないのですが、周知が難しいと感じています。
社内イントラで告知をしますが、いろいろな記事に埋もれてしまったり、メールでのお知らせも忙しいと他のメールに埋もれてしまう…。イベントに参加している人がそばにいて、「えっ、そんなのやっていたの?参加したかった!」というパターンはよく聞きますね。
―イントラや社内報だけだと難しいという話はよく聞きます。ヘルスケアリーダーのような方を立てて、その方から周知していくという工夫をされている企業様もありますね。
日野間氏:一度参加すると楽しいですし、賞品ももらえるので、そういう人は欠かさず参加してくれると思うんです。でも、参加していない方から私が聞いた中には、隣の席の方が毎朝汗だくになって歩いてくるのですごいノルマがあるイベントだと勘違いされていました。気軽に参加できるイベントだと説明すると、「ああ、そうなんですか」とご理解いただき、次はやってみようと思ってくださる方もいます。
加藤氏:管理部署や衛生推進者発信の周知は行っていますが、メールベースになるので、どうしてもそういうメールが目に入らない人がいますね…。
今回の参加理由のなかで、前回の秋に参加はしなかったけど、楽しそうだと思ったので参加したという方もいらっしゃいました。
健康イベントは今まで単発で行うことが多かったのですが、ウォーキングイベントに関しては、当面、秋と春に定例で行っていこうという形になっているので、そのなかで参加者がどんどん広がるといいかなと考えています。毎回少しずつ形を変えながら、皆さんが飽きずに楽しみに待ってくれるイベントにできると良いなと思います。
―ありがとうございました。
取り組みのポイントまとめ
【実施期間】
【お知らせについて】
【イベント運営について】
・歩き過ぎを防ぐため、1日の歩数に上限を設定(秋:2万歩→春:1万5,000歩)
・開催中1週間ごとに社内イントラに中間発表記事を掲載
(一覧に表示されるニックネームやたくさん歩いている方について、イベントの参加者・不参加者問わず話題に)
・終了後、各参加者へ参加者本人の「平均歩数」とそれに伴う「寄付金額」を記載したメールを送付
【インセンティブ】
・参加者それぞれの平均歩数を合計し、1歩=0.05円換算でNPO法人へ寄付
(例:平均8,000歩の場合400円の寄付に)